2009/11/12

宮脇檀 旅の手帖/宮脇彩

宮脇檀旅の手帖
宮脇 彩
彰国社 ( 2008-01 )
ISBN: 9784395009060
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

故宮脇檀先生のスケッチブックがわりの手帖をもとに、長女でエッセイストの宮脇彩(さい)さんが編纂した本。
「 父の椅子 男の椅子」とともに、超お気に入り。久しぶりに手に取ったら、一瞬で引き込まれてしまった:)
以下、自分自身の仕事の取り組み方だとか、手帳に対するこだわりとかで、このところぼんやり考えていたことと妙に重なって言葉通り「腑に落ちた」ところ。
なぜ実測するのかと、一度父に尋ねたことがある。
「自分の手で測って描くことで色々なことが伝わってくるのだ」
というのが父の答。ドアの開き方、ベッドや家具の配置、バスタブの大きさ、時計の向きなど、ディテールからは設計者の意図やそのレベルが、間取りの取り方からは時代やホテルのクラス、コアターゲットになる層、そして経営方針まで見えてくるのだという。
「旅の全てが勉強になるし、全てが面白い」
そう語る父は、人が暮らす場所のあれやこれやを、清濁全てひっくるめて面白がる観察者の目をしていた。(中略) 父の旅の記憶と興奮、そして想いがギュッとつまったこの手帖。薄紙を綴じてあってふわりと軽いはずなのに、今はずしりと重い。
(「はじめに 父の旅」より抜粋)
旅をする以上、何のためにこの旅をするのかという意識を持ちたい。建築が見たいのか、女に触れたいのか、うまいものが食べたいのか、ただ土産が買いたいのか、何でもいい。まず目標を設定すること。目標を設定しさえすれば、必ず何か収穫はある。逆に、何の意識もなければ何も見えない。テーマを持って出かけるのとそうでないのとでは、収穫が10倍は違うのだ。(1988 宮脇檀「建築家の眼」)
ある建物が感動的であるとしたら、なぜだろうか(感じてみた上で)考えてみる。分析してみる。裏にある哲学を理解する。そしていま、自分のしている方法がその線上にあるかどうか比較してみて、乗っていればその線上でどこまで近づけられるかを具体的に考える。
優れた建物は無数にある。洋の東西、歴史の古今、著名の大記念建造物から、無名の小さな村の建物、ときには町工場の1つにすらアッと思う部分があったりする。(1995 宮脇檀「日曜日の住居学」)

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